Vol.4 【2004/10/15】
|
西洋と東洋が融合したクラシックエレガンスな館
『都会のオアシス東京都庭園美術館』
東京都庭園美術館 -白金-
|
今回ご紹介いたしますのは、港区白金にあるアールデコ様式の東京都庭園美術館です。こちらの美術館は1933年(昭和8年)に建てられた朝香宮鳩彦王と允子内親王(明治天皇第8皇女)の邸宅を美術館として1983年に開館しました。戦後は首相官邸、国賓の迎賓館としても使用されました。
 |
庭園では四季折々
東洋・西洋の美を堪能
|
私がこちらの美術館を気にいっている理由は、いくつかあります。そのひとつには行き届いた美しい庭園があることです。大都会に佇むオアシスです。それも日本庭園と洋式庭園の両方が楽しめます。2月は梅、4月は桜、6月以降は紫陽花、バラそして10月は金木犀、11月は紅葉と一年を通して庭園を楽しめます。日本庭園にある紅葉樹と松の木と陽の光りが溶け込んだ情景は本当に美しいです。庭園内にはベンチがありますので、のんびり本などを読んだりすることもできます。今は金木犀の甘酸っぱい香りが庭園一杯に広がる季節です。当時宮様は洋式ガーデンパーティーを取り入れ、来賓のおもてなしを庭園で行っていたこともあったそうです。日本のガーデンパーティーの先駆けだったのでしょう。
 |
世界的にも珍しい香水塔と
当館館長の井関さん
|
美術館内で、ぜひご覧いただきたいスポットをご紹介しましょう。まずは入館して最初に展示されている香水塔です。大変めずらしいものです。私が以前、香りの学校に在籍していた頃、こちらの井関館長様に香水塔を中心とした美術館の魅力をレクチャーしていただいたことがあります。私はその時に初めて、このような芳香用の美術品があることを知りました。こちらの作品はフランス国立セーブル陶磁器製造所の芸術監督を務めていたアンリ・ラパンが1932年にデザインしました。今でいうと「アロマポット」のようなものです。香水塔の内部には電球が組まれており、その熱で香りが漂うようになっています。
とても大きな作品で、香水の噴水塔とは私も気づきませんでした。洋館のエントランスにあるので、諸外国の来賓の方との会話もこの作品のお陰で、すぐに和んだのではないかと思います。
次のオススメは大客室に飾られているシャンデリアです。こちらは、ガラス職人で有名なルネ・ラリックの作品です。ラリックはコティー社から香水瓶を依頼され、その作品の出来が素晴らしかったことをきっかけにガラス職人として有名になります。1948年に発売されたニナリッチのレール・デュ・タン(時の流れ)の香水ボトルはラリックの代表作です。2羽の鳩をシンボルにした美しいクリスタルボトルです。日本でもお土産香水ベスト10に常にランキングされるほど、愛されている香水ですね。こちらのシャンデリアも香水瓶と同じようにカッティングが緻密で繊細です。光りがあたると細やかなカッティングが一層美しくさまざまな表情を見せてくれます。
私がこちらの洋館全体的な印象で好きなところは、半円形や楕円を使ったフォルムです。丸みを帯びたものは柔らかく、女性らしさを感じさせます。大食堂や殿下の書斎はアーチ型のモチーフの部屋で心安まる空間を創りだしていると思います。このような日本と西洋のクラシックエレガンスの空間がこれからも大事に保管され、後世まで残されていくことを私は願っています。
「こちらでは、展覧会を通じて世界の文化交流の架け橋になれば・・・」と仰る井関館長様。穏やかで大変お洒落なお方です。お写真を一緒に撮らせていただいたとき、エミールガレのネクタイをされていらっしゃったのがとても印象的でした。現在は明星大学芸術学科の教授でもいらっしゃいます。
2004年11月まで行われてる、エミール・ノルデ展はドイツの色彩と幻想画家です。ノルデ財団の希望により、会場内は光りを入れず、幻想的な印象で展示されています。本来は光りと緑を取り入れた明るい館内ですが、作品によってはわざとそれらを取り入れず、新しい試みをいろいろ行っていらっしゃいます。美術館の洋館そのものが観覧できる日も1〜2年に一度催されています。そして月3回ぐらいはミュージアムコンサートがあります。
演奏者のバックには緑豊かな庭園を見ることができ、音楽と美術と自然を同時に堪能できる優雅なひとときです。約1時間ぐらいですが、素晴らしい演奏がたっぷりと聴けます。
館名 |
東京都庭園美術館 |
所在地 |
〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9  |
連絡先 |
Tel 03-3443-0201 Fax 03-3443-3228 |
開館時間
|
午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)
|
休館日 |
毎月第2・第4水曜日(祝祭日の場合は開館し、翌日休館)
年末年始
展覧会準備期間(美術館のみ休館・庭園への入場は可能)
|
館長プロフィール |
井関正昭氏
1928年横浜生まれ
東北大学法文学部美学美術史学科卒。
西洋・日本近代美術史専攻。
国際文化振興会、ローマ日本文化会館館長、在イタリア日本大使館公使、北海道立近代美術館館長を経て
現在、東京都庭園美術館館長、明星大学専任教授。
その他、千葉県美術館資料審査委員をつとめている。
【所属学会等】
国際美術評論家連盟常任理事、ジャポネズリー研究学会理事、美術史学会、地中海学会、日仏美術史学会、北海道日伊協会名誉会員
【著書】
「近代絵画の展開」(共訳)美術出版社
「原色世界の美術イタリア編」(共著)小学館
「戦後のヨーロッパ絵画」(訳)平凡社
「近代日本美術史」(共著)有斐閣
「モディリアーニ」(訳)評論社
「画家ファンタネージ」中央公論美術出版
「イタリアの近代美術」小沢書店
「日本の近代美術」明星大学出版部 ほか
【受賞】
イタリア共和国文化功労賞「グランデ・オフィシャル」1989年
|
|
|